他店で断られた時計も修理し、思い出を未来へ繋ぐ、渋谷の時計修理店「はらじゅく時計宝石修理研究所」店長の天野一啓

「品物をただ修理するのではなく、時計や宝飾品の背景にあるお客様の思い出を大切にしたい。」そう語るのは、はらじゅく時計宝石修理研究所店長の天野さん。原宿駅から徒歩約1分のお店で、お客様が持ち込まれる時計やジュエリーを修理しています。預かった品物を直すだけでなく、背景にある想いに寄り添う天野さんに、他店にはない強みや仕事をするうえで大切にしていることを伺いました。
原宿の時計修理専門店、「はらじゅく時計宝石修理研究所」の事業について
天野さんの現在のお仕事内容についてお聞かせください
メインの仕事は、お客様が持って来られた時計や宝飾品の修理です。腕時計だけでなく、掛け時計や置時計にも対応しています。
具体的な仕事の内容は、以下のとおりです。
- オーバーホール
- 電池交換
- 時計・宝石修理
- 宅配修理
その他に、はらじゅく時計宝石修理研究所の経営・運営、WEBメディア事業もおこなっています。
はらじゅく時計宝石修理研究所の実績について教えてください

時計宝石修理研究所は、時計・ジュエリー修理専門店(※販売併設店を除く)の中では最多となる全国17店舗を展開し、グループ全体で年間10万件以上の修理を手がけています。この数字は、業界でもトップクラスの実績です。
原宿の店舗のみだと、1日で15~20件ほどのご依頼があります。駅直結型のショッピングモール内にある他店と異なり、原宿店は路面店ということで、数字だけ見ると少なく感じるかもしれません。
しかし、その分ネットでの集客に注力しており、オンライン経由で多くのご依頼をいただいています。
路面店だからこそ、お客様一人ひとりとじっくり向き合えるのが特徴ですね。
ありがたいことに、800件を超える高評価レビューや、芸能人の方々にもご来店いただいています。



原宿店には渋谷・新宿エリア以外からもお客様は来られるのでしょうか?
東京はもちろん、神奈川や埼玉、千葉方面からご来店される方も多いです。中には、東京への出張のついでに、北海道や沖縄から時計やジュエリーを持って来られるお客様もいらっしゃいます。
あとは、海外旅行中に修理を依頼される、外国人の方もいらっしゃいますね。特に、欧米の方が多いです。日本の技術にはブランド力があるようで、「日本で修理したい」という方が多数いらっしゃいます。私たちが思っている以上に、日本のサービスは信頼していただけているんだと実感する、嬉しい瞬間です。
はらじゅく時計宝石修理研究所では、海外からのお客様の品物にも対応しているのですか?
はい、対応しています。ただし、場合によっては修理に時間がかかることもあるため、日本に滞在する期間が短い方は難しいかもしれません。
国内発送はおこなっているのですが、海外発送していない点にご了承いただければと思います。そういった配送面に問題がなければ、海外からのお客様の品物に対しても修理が可能です。
はらじゅく時計宝石修理研究所ならではの強みを教えてください

修理加工によって、お客様の思い出ストーリーを蘇らせることです。品物の状態だけでなく、背景にある思い出までヒアリングさせていただいてからお預かりしています。
以前、若くして亡くなった娘さんの時計を修理したことがあります。お客様によると、購入店では、部品が手に入らないため修理を断られてしまい、半ば諦めていたとのことでした。そんなとき、はらじゅく時計宝石修理研究所のホームページを見つけて依頼してくださったのです。
修理させていただいたところ、目の前でお客様がぽろぽろと涙をこぼされました。その姿を見て、「私たちの仕事は誰かの役に立つんだ」と、胸が熱くなったのを今でも覚えています。
お仕事をするうえで大切にされていることを教えてください
出来る限り、お客様からのご依頼を断らない姿勢を大切にしています。
お持ち込みいただく時計やジュエリーは、単なる品物ではありません。お父様から譲り受けた時計や、おばあ様の形見分けでもらったジュエリーなど、一つひとつに持ち主の人生や大切な思い出が詰まっています。
だからこそ、どんな状態であっても基本的に「できません」と簡単には言いたくないんです。この想いは、会社の「真価値の追求と付加価値の創造」という理念にも繋がっています。ただし、構造的に難しいお品物もあります。
そもそも時計宝石修理研究所が生まれたのも、お客様の声がきっかけです。
運営母体となる会社は、祖父が創業した「株式会社ミノル」で、時計や宝飾品がよく売れた高度経済成長期に商品をご購入されたお客様が、何十年も経ってから修理に持って来られることがありました。他店では部品がなかったり、取り扱っていなかったりなどという理由で断られてしまったそうです。「ミノルさんやったら何とかしてくれるんちゃうかな」と、藁にもすがる想いでご相談に来られたんですよね。お客様の期待に応えたいという一心で修理したことが、私たちの原点になっています。
お客様、従業員、会社といった、時計宝石修理研究所に関わるみんなが幸せになる、「三方よし」の考え方を大切にしながら尽くしたい。そういった気持ちで、毎日お客様と向き合っています。
なぜ、他店で断られた時計も修理できるのでしょうか?
他店で修理を断られてしまうケースは、残念ながら少なくありません。店で取り扱っているブランドしか対応していなかったり、リスクを十分に説明しきれず、お断りしたりする場合があるようです。
一方私たちは、運営母体である株式会社ミノルの創業から60年間、時計や宝飾品の修理と向き合い続けた歴史の中で、膨大な知識と確かな技術を培ってきました。
お客様は「修理すれば完璧に直る」と期待されますが、アンティークの時計など年代物の場合、一箇所を修理しても別の部分に不具合が生じてしまう可能性があります。
私たちは「ワインディングマシーン」という装置を使って、入念に動作確認をおこないます。しかし、お客様の普段の使い方を完全に再現できるわけではありません。だからこそ、「もしかしたら、修理後にこういった不具合が起こる可能性があります」ということまで正直にお伝えし、ご納得いただいたうえで修理をお受けしています。

また、私たち時計宝石修理研究所は、販売をおこなわず、修理に特化していることも大きな理由です。「研究所」という名前の通り、日々技術を研究してノウハウ化しているので、他店で断られた品物でも修理できる可能性が高いのです。
天野さんの経歴について
天野さんが時計宝石修理研究所へ入社されたきっかけや経緯についてお聞かせください
実は、私のキャリアは少し異色なんです。20代の頃、昼はユニクロ社員として働き、夜はクラブでDJをしていました。
大学時代をカナダのバンクーバーで過ごしたものの、勉強についていけず、挫折して日本に帰ってきた経歴があります。「何かをしなければ」という焦りから、ユニクロで働き始め、当時はクラブミュージックの全盛期だったこともあり、カナダ時代から憧れていたDJ見習いとしても活動していたんです。
実はその傍ら、祖父が創業した「株式会社ミノル」でもアルバイトとして手伝っていました。ただ、当時はまだこれを仕事にするという覚悟は持てていませんでしたね。
そんな私を見かねたのか、叔父が「大阪に時計とジュエリーの専門学校ができるんだけど、興味はあるか?」と声をかけてくれたんです。この一言が、私の転機となりました。腹を括って専門学校に通い始め、卒業と同時に会社の東京進出プランが立ち上がり、そのまま原宿店の立ち上げから携わることになったんです。
それまでは、自分でも嫌になるほど一つのことが続かない性格でした。けれども、東京での生活を通じて「一度決めたことを最後まで貫く」大切さを学べました。声をかけてくれた叔父には、本当に感謝しています。

渋谷の時計修理店「はらじゅく時計宝石修理研究所」の今後について
現在、お仕事をされている中で感じられている課題があれば教えてください
一番は、時計宝石修理研究所の企業理念に賛同してくれる仲間を、もっと増やすことです。技術はもちろん、お客様からお預かりする品物の背景を大切にできる人が理想です。
時計宝石修理研究所では、接客と修理どちらも対応する必要があります。バランスよくできるのがベストですが、どちらかというと接客力のほうが重要だと考えています。
接客はフロントに立つことでもあるので、お客様への「伝え方」は大切です。というのも、年代物の時計などは、一度修理してもまた不具合が生じることもあります。人によって使用する頻度や状況はさまざまなので、100%店舗で同じ状況は作れません。たとえ検品した時点では動いていても、お客様が実際に使ってみて初めてわかることもあるんです。
そういった細かい部分を修理前にお客様に理解していただくために、私ももっと上手く説明できるようになりたいですし、一緒に頑張ってくれる仲間が増えれば良いですね。
天野さんの描く今後の展望をお聞かせください
まずは、原宿という地域で「時計やジュエリーの修理なら、はらじゅく時計宝石修理研究所」といっていただけるような存在になることです。将来的にはより多くの方に私たちのサービスを届けられるように、お店を増やしていくことも考えています。そのためには、お客様に心から喜んでいただけるサービスを、提供し続けることが必要です。
特に、時計やジュエリーの預かり方は大事だと考えています。お客様に納得してお任せいただけるよう、さらに研究を重ねて改善していきたいです。

最後に、時計やジュエリーの修理を検討されている方に向けてメッセージをお願いします
もし、お手元に眠っている時計やジュエリーがあって、「もう古いから無理だろう」、「他のお店で断られたし…」などと、諦めかけている方がいらっしゃったら、ぜひ一度はらじゅく時計宝石修理研究所にご相談ください。
たとえば、交通事故で大きく破損してしまったような、「これはもうダメだろう」と思われるものでも、修理できる可能性があります。
大切な思い出が詰まったお品物を、簡単に諦めてほしくありません。私たちはお客さまの想いに寄り添い、どうすれば一番良い形でまた使えるようになるかを一緒に考えます。ぜひお話をお聞かせください。
インタビュー:中本晃太郎
原稿制作:春野なほ
渋谷で時計修理・オーバーホールをするなら、はらじゅく時計宝石修理研究所へ
はらじゅく時計宝石修理研究所は、お品物の状況だけでなく、その背景にある思い出まで丁寧にヒアリングいたします。他店で断られた時計やジュエリーのメンテナンス、オーバーホールによる対応も承っているので、原宿・渋谷・新宿エリアご利用の方はお気軽にご相談ください。